Ruby 1.9.2 リファレンスマニュアル > ライブラリ一覧 > rinda/rindaライブラリ

library rinda/rinda

要約

Rubyで実装されたタプルスペース(Tuple Space)を扱うためのライブラリです。

タプルスペースとは並列プログラムにおける一つのパターンです。 並列プログラミングにおいては、ロックのような同期処理が必須ですが、 適切な同期処理を実現することは困難をともないます。 このパターンにおいては、複数の並列単位(スレッド/プロセス)間の通信をすべて タプルスペースという領域を経由して行います。これによって プロセス間の通信トポロジーを単純化し、問題を簡単化します。 タプルスペースに対しては、タプルを書き込む(write)、取り出す(take)、 タプルの要素を覗き見る(read) という操作のみが利用できます。可能な操作を限定し、定型化することで 安全な同期処理を実現します。rinda においてはタプルとは 配列もしくはハッシュテーブルを意味します。 タプルを取り出すときにはパターンを指定して、それにマッチした もののみを取り出すことができます。特にタプルの第1要素最初の要素を 限定することで必要なタプルのみを取り出します。

タプルスペースそのものの実装は rinda/tuplespace でなされています。 このライブラリはタプルスペースへのアクセス機能等を提供します。

参考

タプルのパターンについて

Rinda::TupleSpace#takeRinda::TupleSpaceProxy#take などでは 取り出したいタプルを指定するため、パターンをメソッドの引数に渡す必要があります。

パターンは配列、もしくはハッシュテーブルのいずれかです。 配列によるパターンは配列によるタプルにのみ、 ハッシュテーブルによるパターンはハッシュテーブルによるタプルにのみ、 それぞれマッチします。

パターンが配列の場合は、長さが同じ配列タプルにのみマッチします。 そしてパターン配列の各要素が対応する配列タプルの各要素にマッチする 場合にパターンがタプルにマッチします。 各要素に関しては以下が成立する場合にマッチします。

パターンがハッシュテーブルの場合、キーと値のペアの個数が一致し、 キーの集合が一致し、それぞれのキーに対応する値がマッチする 場合にパターンがタプルにマッチします。値のマッチのルールは 配列の各要素に関するマッチのルールと同じです。 ハッシュテーブルのキーとしては文字列のみ使えます。

この例では、rinda_ts.rb を起動したプロセスがタプルスペースを提供します。

rindas.rb はタプルスペースに書き込まれたクエリ('sum' というキーのタプル) を取り出し、それを2倍したものを応答として('ans'というキーのタプル) タプルスペースに書き込みます。

一方 rindac.rb はクエリ('sum' というキーのタプル)をタプルスペースに書き込み、 その応答('ans'というキーのタプル)をタプルスペースから取り出して表示します。

例の動かしかたは以下の通りです。

# まず、rinda_ts.rb を動かす
ruby rinda_ts.rb druby://localhost:40121

# rinda_ts.rb を動かしたまま、rindas.rbを動かす
# 複数の rindas.rb を同時に動かしてもよい。
# 別のターミナルで:
ruby rindas.rb druby://localhost:40121

# rindac.rb を動かし、クエリをタプルスペースに書き込む
ruby rindac.rb druby://localhost:40121
# on rindas.rb terminal
do_it(1)
do_it(2)
do_it(3)
do_it(4)
do_it(5)
do_it(6)
do_it(7)
do_it(8)
do_it(9)
do_it(10)
# on rindac.rb terminal
[1, 2]
[2, 4]
[3, 6]
[4, 8]
[5, 10]
[6, 12]
[7, 14]
[8, 16]
[9, 18]
[10, 20]

rindas.rb や rindac.rb を同時に複数動かすと、タプルスペースの並列性の問題に ついてのよりよい理解が得られます。例えば rindas.rb を複数動かすと、 rindac.rb からのクエリを複数の rindas.rb が分散して処理します。 複数の rindac.rb を動かしても、応答が混ざったりせず、rindac.rb に適切に 応答が返されます。これは DRb.uri を使うことで rindac.rb のプロセスを 一意に同定しているからです。

# rinda_ts.rb
require 'drb/drb'
require 'rinda/tuplespace'

uri = ARGV.shift
DRb.start_service(uri, Rinda::TupleSpace.new)
puts DRb.uri
DRb.thread.join


# rindas.rb
require 'drb/drb'
require 'rinda/rinda'

def do_it(v)
  puts "do_it(#{v})"
  v + v
end

uri = ARGV.shift || raise("usage: #{$0} <server_uri>")

DRb.start_service
ts = Rinda::TupleSpaceProxy.new(DRbObject.new(nil, uri))

while true
  r = ts.take(['sum', nil, nil])
  v = do_it(r[2])
  ts.write(['ans', r[1], r[2], v])
end


# rindac.rb
require 'drb/drb'
require 'rinda/rinda'

uri = ARGV.shift || raise("usage: #{$0} <server_uri>")

DRb.start_service
ts = Rinda::TupleSpaceProxy.new(DRbObject.new(nil, uri))

(1..10).each do |n|
  ts.write(['sum', DRb.uri, n])
end

(1..10).each do |n|
  ans = ts.take(['ans', DRb.uri, n, nil])
  p [ans[2], ans[3]]
end

この例は ruby の配布物の sample/drb/rinda{_ts,s,c}.rb と同じものです。

クラス

Rinda::DRbObjectTemplate
Rinda::SimpleRenewer

シンプルな renewer で renewer のサンプル実装です。

Rinda::Tuple

Tuple のためのクラスです。ユーザがこのクラスを直接使うことはありません。

  Rinda::Template

タプルのマッチングのためのクラスです。 ユーザがこのクラスを直接使うことはありません。

Rinda::TupleSpaceProxy

リモートの Rinda::TupleSpace オブジェクトを包む プロクシクラスです。

モジュール

Rinda

rinda/rinda および rinda/tuplespace の名前空間を提供する モジュール。

例外クラス

Rinda::RequestCanceledError

rinda で take などのリクエストが何らかの理由でキャンセルされた ことを意味する例外クラス。

Rinda::RequestExpiredError

rinda で take などのリクエストがタイムアウトしたことを 意味する例外クラス。

Rinda::RindaError

rinda ライブラリの基底例外クラス

  Rinda::InvalidHashTupleKey

Rinda::TupleSpace#write などで不正なハッシュテーブル(キーが 文字列でないもの)をタプルスペースに書き込もうとすると発生すると発生する 例外です。