Ruby 1.9.3 リファレンスマニュアル > ライブラリ一覧 > rinda/rindaライブラリ
Rubyで実装されたタプルスペース(Tuple Space)を扱うためのライブラリです。
タプルスペースとは並列プログラムにおける一つのパターンです。 並列プログラミングにおいては、ロックのような同期処理が必須ですが、 適切な同期処理を実現することは困難をともないます。 このパターンにおいては、複数の並列単位(スレッド/プロセス)間の通信をすべて タプルスペースという領域を経由して行います。これによって プロセス間の通信トポロジーを単純化し、問題を簡単化します。 タプルスペースに対しては、タプルを書き込む(write)、取り出す(take)、 タプルの要素を覗き見る(read) という操作のみが利用できます。可能な操作を限定し、定型化することで 安全な同期処理を実現します。rinda においてはタプルとは 配列もしくはハッシュテーブルを意味します。 タプルを取り出すときにはパターンを指定して、それにマッチした もののみを取り出すことができます。特にタプルの第1要素最初の要素を 限定することで必要なタプルのみを取り出します。
タプルスペースそのものの実装は rinda/tuplespace でなされています。 このライブラリはタプルスペースへのアクセス機能等を提供します。
Rinda::TupleSpace#take や Rinda::TupleSpaceProxy#take などでは 取り出したいタプルを指定するため、パターンをメソッドの引数に渡す必要があります。
パターンは配列、もしくはハッシュテーブルのいずれかです。 配列によるパターンは配列によるタプルにのみ、 ハッシュテーブルによるパターンはハッシュテーブルによるタプルにのみ、 それぞれマッチします。
パターンが配列の場合は、長さが同じ配列タプルにのみマッチします。 そしてパターン配列の各要素が対応する配列タプルの各要素にマッチする 場合にパターンがタプルにマッチします。 各要素に関しては以下が成立する場合にマッチします。
パターンがハッシュテーブルの場合、キーと値のペアの個数が一致し、 キーの集合が一致し、それぞれのキーに対応する値がマッチする 場合にパターンがタプルにマッチします。値のマッチのルールは 配列の各要素に関するマッチのルールと同じです。 ハッシュテーブルのキーとしては文字列のみ使えます。
この例では、rinda_ts.rb を起動したプロセスがタプルスペースを提供します。
rindas.rb はタプルスペースに書き込まれたクエリ('sum' というキーのタプル) を取り出し、それを2倍したものを応答として('ans'というキーのタプル) タプルスペースに書き込みます。
一方 rindac.rb はクエリ('sum' というキーのタプル)をタプルスペースに書き込み、 その応答('ans'というキーのタプル)をタプルスペースから取り出して表示します。
例の動かしかたは以下の通りです。
# まず、rinda_ts.rb を動かす ruby rinda_ts.rb druby://localhost:40121 # rinda_ts.rb を動かしたまま、rindas.rbを動かす # 複数の rindas.rb を同時に動かしてもよい。 # 別のターミナルで: ruby rindas.rb druby://localhost:40121 # rindac.rb を動かし、クエリをタプルスペースに書き込む ruby rindac.rb druby://localhost:40121 # on rindas.rb terminal do_it(1) do_it(2) do_it(3) do_it(4) do_it(5) do_it(6) do_it(7) do_it(8) do_it(9) do_it(10) # on rindac.rb terminal [1, 2] [2, 4] [3, 6] [4, 8] [5, 10] [6, 12] [7, 14] [8, 16] [9, 18] [10, 20]
rindas.rb や rindac.rb を同時に複数動かすと、タプルスペースの並列性の問題に ついてのよりよい理解が得られます。例えば rindas.rb を複数動かすと、 rindac.rb からのクエリを複数の rindas.rb が分散して処理します。 複数の rindac.rb を動かしても、応答が混ざったりせず、rindac.rb に適切に 応答が返されます。これは DRb.uri を使うことで rindac.rb のプロセスを 一意に同定しているからです。
# rinda_ts.rb require 'drb/drb' require 'rinda/tuplespace' uri = ARGV.shift DRb.start_service(uri, Rinda::TupleSpace.new) puts DRb.uri DRb.thread.join # rindas.rb require 'drb/drb' require 'rinda/rinda' def do_it(v) puts "do_it(#{v})" v + v end uri = ARGV.shift || raise("usage: #{$0} <server_uri>") DRb.start_service ts = Rinda::TupleSpaceProxy.new(DRbObject.new(nil, uri)) while true r = ts.take(['sum', nil, nil]) v = do_it(r[2]) ts.write(['ans', r[1], r[2], v]) end # rindac.rb require 'drb/drb' require 'rinda/rinda' uri = ARGV.shift || raise("usage: #{$0} <server_uri>") DRb.start_service ts = Rinda::TupleSpaceProxy.new(DRbObject.new(nil, uri)) (1..10).each do |n| ts.write(['sum', DRb.uri, n]) end (1..10).each do |n| ans = ts.take(['ans', DRb.uri, n, nil]) p [ans[2], ans[3]] end
この例は ruby の配布物の sample/drb/rinda{_ts,s,c}.rb と同じものです。
Rinda::DRbObjectTemplate | |
Rinda::SimpleRenewer | シンプルな renewer で renewer のサンプル実装です。 |
Rinda::Tuple | Tuple のためのクラスです。ユーザがこのクラスを直接使うことはありません。 |
Rinda::Template | タプルのマッチングのためのクラスです。 ユーザがこのクラスを直接使うことはありません。 |
Rinda::TupleSpaceProxy | リモートの Rinda::TupleSpace オブジェクトを包む プロクシクラスです。 |
Rinda | rinda/rinda および rinda/tuplespace の名前空間を提供する モジュール。 |
Rinda::RequestCanceledError | rinda で take などのリクエストが何らかの理由でキャンセルされた ことを意味する例外クラス。 |
Rinda::RequestExpiredError | rinda で take などのリクエストがタイムアウトしたことを 意味する例外クラス。 |
Rinda::RindaError | rinda ライブラリの基底例外クラス |
Rinda::InvalidHashTupleKey | Rinda::TupleSpace#write などで不正なハッシュテーブル(キーが 文字列でないもの)をタプルスペースに書き込もうとすると発生すると発生する 例外です。 |